やまのこ保育園

惑星のようす

"わらべうたの講座を受けて"

2023.12.01
わらべうたの講座を受けて

Text : Shizuko Miura

2023年11月19日、鶴岡市すこやかネットの公開講座がありました。今回のタイトルは、「こどものこころとからだを育てるわらべうた ~感覚をはぐくむわらべうた~」講師は名古屋短期大学山下直樹さんでした。本講座を受講した感想をまとめました。

はじめに
日々の保育で、私自身が知っていて子ども達と楽しんでいるわらべうたのレパートリーが少なくもっと知りたいという思いと、わらべうたを通して子どものこころとからだを育てるとはどんなことだろうという問いがあり受講しました。(本講座は市内在住であれば無料で受けられました)

乳幼児保育で大切なこと
エリクソン(アメリカの精神分析家)の発達段階論で、乳幼児期の発達での課題として基本的信頼の獲得があります。基本的信頼を持つことは、建物で例えればしっかりした土台を作ることでありそれがぐらついていると不安定なものとなることから、いかに大切なことか理解できます。基本的信頼を持つために愛着の形成が必要となります。愛着(アタッチメント)とは、不安や恐れ疲れなどネガティブな心理状態の時に、特定の人に接近、接触することで、心的安定を回復しようとする行動制御システムです。ボウルビイ(イギリスの児童精神科医)が提唱しました。愛着形成をはかる時に肌と肌の触れ合いによる触覚機能に働きかけると良いそうです。触覚は安心、信頼の気持ちを育てる働きがあります。肌と肌が触れ合うことでオキシトシン(愛情ホルモン)の分泌が促されます。特に生後一年間に脳がオキシトシンの影響を十分に受けるとストレスに強く、記憶力が良いという効果が一生続くことがわかっているそうです。

触覚を育てるわらべうた
山下さんが学んだシュタイナー教育の感覚論では「触覚」「生命感覚」「運動感覚」「平衡感覚」という四つの感覚を育てることが、子どものこころとからだを育むことにつながるという考えだそうです。
「触覚」は触れ合うことで安心、信頼を育みます。
「生命感覚」は「食べる、寝る、あそぶ」を中心とした生活リズムを作ることで自律神経を整えます。
「運動感覚」は自分の体の大きさや動きを知覚することで自由に動く体へ導きます。
「平衡感覚」は回転、前後上下左右の動きを知覚し、外部空間と自身との関係を知覚します。優しく触れ合ったり、くすぐったり、抱きしめられたり、揺れたりすることが多いのがわらべうたの関わりです。大好きな大人から触れられることで「自分は自分でいいのだ」という気持ちが生まれ、大人との愛着関係も深まっていきます。また触覚を含む他の三つの感覚も育む要素がわらべうたに多く入っています。

わらべうたとからだの動き

「いっぽんばしこちょこちょ」  くすぐられる  緊張が緩み安心へ
「いちばちとまった」  つねられる  緊張が緩み安心へ
「いちじくにんじん」  ぶら下がる  ぶら下がることで体を支える筋肉が育つ
「うまはとしとし」  上下に揺れる  上下の揺れで平衡感覚を刺激
「おふねはぎっちらこ」  前後に揺れる  安心の揺れで落ち着く

上記はわずかですがわらべうたとその時の体の動き、それによるこころとからだの状態を簡単に書いてみました。

子育ての知恵としてのわらべうた
長い年月を経て子どもと大人の関わりの中で続いてきたわらべうたは、子どものこころとからだだけでなく、大人もそれにより一層愛おしさを感じたりまたはイライラなどのネガティブな感情を消化して昇華させる子育ての知恵という面もあります。

まとめとして
保育の中で、わらべうたのレパートリーを増やしたいという思いと、なぜわらべうたが子どものこころとからだを育てるのかという問いをもち受講しました。
これまでどんな時にわらべうたを歌っていたか考えてみると、お昼寝前のゆったりしたい時、なんだか落ち着かない様子だなと思った時に歌っていたように思います。乳幼児期の子ども達はこころとからだも十分に知覚できずにいる状態です。それにより不安が強くなり泣いたり、体の動きも満たされず走り回ったり落ち着かなかったりという姿で表現しています。その時わらべうたで関わることで満たされることもあることがわかりました。そしてわらべうたは子ども大人双方向の安心や楽しさも感じます。

社会状況において色々な機会にデジタルツールによる子どもへの影響も多く心配されています。デジタルに依存しがちなところから、せめて乳幼児期はアナログな経験を大切にしたいと、私は思います。その一つのあり方としてわらべうたで触れ合って楽しさが感じられたら、より深い関わりになるのではないでしょうか。

(山下さんの『「気になる子」のわらべうた』に色々な気になるに合わせてわらべうたが載っています。解説の文にもヒントが沢山入っています)

 

参考書籍
『「気になる子」のわらべうた』山下直樹著 クレヨンハウス
『赤ちゃんの発達とアタッチメント 乳児保育で大切にしたいこと』遠藤利彦著 ひとなる書房
『子どもへのまなざし』佐々木正美著 福音館書店
『センス・オブ・ワンダー』レイチェル カーソン著 上遠恵子訳 川内倫子写真 新潮文庫版 解説
『私たちの脳はアナログな刺激を求めている』大隈典子

RELATED

BACK TO TOP