やまのこ保育園

惑星のようす

"オープンデイ特集[6]-ドキュメントウォールの展示をふりかえる「わたし/my space/家」"

2019.11.01
オープンデイ特集[6]-ドキュメントウォールの展示をふりかえる「わたし/my space/家」

Text : Tomoko Nagao

ドキュメントウォールに展示した「わたし / my space / 家−マイスペースへの2つのアプローチ」について、展示に至るまでを振り返ります。
この展示はあけび組保育者で写真家でもあるOさんが主に担当しました。9月にあけび組で家づくりが流行り始め、子どもたちのつくり方や素材、アプローチが実に多様だったので、その探求する姿を追ってみようと思ったのが、家づくりを展示のテーマにしたきっかけです。子どもたちは、家を紙で作ったり、カプラ(積み木)でつくったり、大型組み木でつくったり、竹で作った三角錐のような骨組み(ティピ)にスカーフを巻きつけて壁にしたり、部屋のカーテンに小物を持ち込んでみたり、地面に間取りを描いてみたりと、身近なものを使いこなして多方向から家づくりを続けていました。そして興味深いことに、多くの子が、自身がつくった家に「ここはぼくが寝る場所」「わたしの部屋はここ」「これはわたしのイス」と、自分の居場所(マイスペース)を確保していることが見えてきました。
この3-5歳児の「家づくり」を展示しようと企画会議をする中で、そういえば、0-2歳児も家ごっこをしたり、小さな隙間に挟まって佇む様子がよく見られるけれど、あれは家なのか?何だろう?という問いが見つかったことです。家づくりと、隙間に挟まる行為との間にどのような繋がりがあるのか。それを展示によって考えてみようと、展示が作られていきました。以下、展示の紹介文です。

 

ここには子どもたちが日々の遊びの中で「マイスペース」にアプローチする大きく2つの探求する姿や痕跡を展示しています。
ひとつは、子どもたちが、自身にフィットする「マイスペース」をあちこちで発見し、安心した面持ちですっぽりと〈小さな隙間にはまる姿〉。もうひとつは、3-5歳児たちが自らの住まう空間(家というマイスペース)を生み出す〈家づくりをする姿と痕跡〉。
子どもたちはなぜ小さな隙間にはまるのでしょうか。
子どもたちにとって、家づくりとはどのような意味を持つのでしょうか。
小さな隙間に滞在する子どもたちは、その身体的な経験を通して、自分の身体の大きさや輪郭、そして、自分自身(わたし)の存在を確認しているかのように見えます。
また、家づくりに熱中する4-5歳児の子どもたちが、「うちにあそびにおいでよ」と言うとき、そこにはどこか自分を紹介するような響きがあり、家は自分自身である、という感覚があるように思われます。さらに、捕まえたバッタを、「もうお家に帰してあげよう?」「お母さんに会えるお家に帰してあげよう?」というシーンでも「家」という言葉が登場するのが興味深いところです。子どもにとって、家とは、「母」と同じように、安心できるマイスペース・安全基地であり、その存在があることで、自分自身の存在を確かめていくための(逆に言えば、それを失うことは、自身の存在を喪失するほどに大きな意味をもつ)重要なファクターなのではないかと考えました。
子どもたちが隙間というマイスペースに佇むのは、わたしの存在を確認するためではないか。そして、家づくりもまた、家という自身の安全基地を、空間や紙に可視化・定着させることを通じて、その存在を内在化させながら確認し、わたし自身を確認する行為なのではないか。
わたし/マイスペース/家というタイトルは、ここから生まれました。

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