やまのこ保育園

惑星のようす

"月の計画ーマインドマップ"

2019.04.26
月の計画ーマインドマップ

Text : Aya Endo

富士山の頂上に降り注いだ雨が湧き水になるまでに、3年の月日がかかるそうです。山の地中深くに染み込んだ水が、いくつもの地層によって濾過され伏流水となり、湧き水として地表に現れる。そんなイメージを持つと共に、私達の思考もまた同じようなものなのではないかと思いました。いまこの瞬間に私が思いついたアイデアは、随分前に出会った何かの出来事や言葉が過去の経験という地層をくぐり抜けて、あるきっかけによって頭の中に浮かび上がってくる、そんなものなんじゃないかと。そう考えれば、わたしたちが「新しい」と思っているものも異なる視点で眺めてみるともう十分に古いのかもしれない、と連想しました。

 

子どもたちが生きていく未来を見据えて教育を新たに組み立てようとする時、私たち大人たちの思考は未来から見ればとても古いという認識から出発しなければならないと思います。私たちが長い月日をかけて積み重ねてきた固定観念を完全にとりはらうことはできませんが、既にある枠組みを意識し、その外に出ることは可能です。やまのこでは、常に自分の枠組みを意識し、その外に出て新たに組み立て直しつづける人に保育者一人ひとりがなるために、合宿などを通してさまざまな取組みを続けてきました。

そうした中で見えてきたのが、私たちの最先端は常に子どもたちとの関わりの中で湧き上がる「問い」の中にあるのではないか、ということでした。「問い」を手放さず、意識し続けておくこと、テーブルの上に載せて答えのない対話を続けること。そんなことを繰り返す中で、既にある思考の枠組みが揺らぎ、少しずつ新たな視野が開けていくことを実感しています。日々浮かぶ「問い」を大切にし、その問いから子どもたちへの応答や環境の更新を行っていこう、という想いがやまのこジャーナル10号で書いた「問い駆動型」という言葉に込められています。

 

昨年11月に、保育の中で感じた問いを保護者のみなさんと共有するための「問いボード」を各園でエントランスに設置してみました。また「問い」を意識できるように、毎日の記録、月の計画などの計画・記録書類のフォーマットもリニューアルしました。しかし、まだまだ実際の保育環境の更新へと「問い」が活かされていくサイクルをつくる、というところまではたどり着くことができないままでした。

そこで、3月末に実施した職員合宿で、どうやったら「問い駆動型」を実現することができるかを話し合い、毎月月末に作成する翌月の計画のつくり方を見直し、フォーマットをマインドマップ(イギリスの教育者トニー・ブザンが考案した頭の働き方を活性化させるノート法)へ変更してみることにしました。翌月の計画はこれまで主なクラス担当者が一人で行っていましたが、4月からはクラスの担当者全員と園長が参加し、2,3時間かけて作成しました。クラスで起きていること、子どもたち一人ひとりの成長のことなどを、書き込みながら翌月の活動としてどのようなものがふさわしいのか、どんなことを新たに取り組んでいこうか、と書き込んでいきます。誤解のないように書き添えておきたいのは「計画」というとおよそその通りに実行されるものをイメージされるかと思いますが、私たちの計画は予め変更されることを前提としています。それは、私たちのあらゆる活動は子ども自身の関心を起点にしていこうと意識しており、そう意識されていれば、大人の意図を超えてどんどん変化していくことになります。それこそが私たちが大切にしたいことだからです。

 

各クラスの壁面に、作成した新たなマインドマップ型の計画案を掲示することにしましたので、眺めてみていただけたら嬉しいです。日々のささやかな「問い」からクラスの環境も保育者の内的な環境も駆動されていく、その一歩が踏み出せるかどうか。しばらくは、この方法で取り組んでみようと考えています。

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