2019.12.01
「食べられる園庭」をつくろう!
Text:Saeko Imai
今年6月に重機が入り、たくさんの土が盛られ、土管が入り、私たちの「小さな地球」(やまのこでは園庭を「小さな地球」と呼びます)は大きく表情を変えました。その後、草が生え、虫やカエルが現れて、子どもたちとこの場所との関係性も大きく変わりました。常に進化していくやまのこの「小さな地球」。9月と11月に行われた2回のワークショップ「PAMA-NOKO WORKSHOP – 食べられる園庭をつくろう!」のレポートをお届けします。
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やまのこ保育園の保育目標には、「地球に生きているという感受性を育む」という言葉を掲げています。地球に生きているという感受性はどのように育まれるのか。その模索の中でいきあたったのが、パーマカルチャーデザインでした。パーマカルチャーとは環境に負荷をかけず、身の周りのリソースで楽しく豊かな生き方をデザインすること。やまのこ保育園は、子どもたちが園庭での遊びを通して、地球というパーマカルチャーの理念を生かしながら、こどもたちと豊かな環境をつくることを目指しています。多様な生態系の中で、自ら野菜や果物を育て、日々の暮らしを楽しく美味しくしていくことが私たちのビジョンです。共に学びあいながら「小さな地球」のような園庭をつくっていくために、今回のワークショップは企画されました。
(1)ワークショップ Part 1(9月7日-8日開催)/Workshop Part 1 (September 7th – 8th)
最高気温38℃という猛暑の中、9月に開催された1回目のワークショップ。講師はパーマカルチャーの専門家フィル・キャッシュマンさん。計20名の参加者が集まり、やまのこの保護者の皆さんはじめ、スタッフ、そして全国から集まった一般の方(宮城、岩手、東京等から)という多様性のある構成でした。
「パーマカルチャー」という言葉に「それ何?」とよく聞かれます。言葉が一人歩きしてしまうことが多いのですが、フィルさんは「出来るだけパーマカルチャーという単語を使わず、パーマカルチャーを表現しようと思う」と語り、ワークショップがスタート。パーマカルチャーを知るために、フィルさんは「全てが繋がっている」ということを次のように話されました。
「僕(フィル)は、生まれた時は3500gだったけど今は76000gになった。どうしてか。それは、土が作った食べ物を口から入れて身体に集めてきたから。つまり僕は土からできているとも言える。皆んな自分のことを「自分だ」と思っているけれど、実は様々なものが統合されて成り立っている。例えば、さっきまで畑の胡瓜の水分だったものが、今はその胡瓜を食べた僕の脳の水分になり(つまり、一旦「フィル」になり)、そして身体から排出されるとフィルは川の水になり、魚の水になり、他の生物の水になる。細胞にGPSをつけたら1週間くらいで世界1周して、色々な生き物になっていることは科学的に証明されていて。すでに僕らは生態系の一部。これは○○○で、あれは△△△と明確に分けようとするのは、頭脳であって、物理的には全然切り離せない。常に入れ替わっているから。どこで自分の境界を作るかは意識の問題だ。『関係ない』という言葉があるが、関係ないものなんて一つもない。全部関係しているんだよ。このことの限りない美しさを感じられるような暮らしをデザインしたい」
私たちが地球と繋がって暮らしていく上で必要不可欠な「食」。これを自分たちの身の回りにあるもので作ることを子どもたちと体現したい。その願いから、ワークショップ後半はレイズドベッド(野菜を作るための花壇)を製作しました。遊佐からいただいた間伐材の杉の木を使い、表面の皮を剥ぎ、チェーンソーで同じ長さに切り揃え、地面に並べ、鎹(かすがい)をトントン打ち付けて固定していきます。汗が滴る激しい猛暑でも、子どもも大人も笑顔と優しい声がけが絶えることなく、見事なレイスドベッドが完成しました。ワークショップの後、子どもたちと土が敷かれ、タネが撒かれ、美味しいカブと大根ができました!
(2)ワークショップ第2回(11月9日-10日開催)/Workshop Part 2 (November 9th – 10th)
11月のワークショップPart 2は、前回よりも多く28名の参加者が集まりました。今回のテーマは「土と植物」。やまのこに土が肥えていく仕組みの導入をと、コンポスト作りが行われました。フィルさんは地球が抱える問題にこんなふうに話されました。
「いまの農業は、経済的に成り立たせるために、生産性にフォーカスしすぎて、結果、空気にも温度にも大きな影響を及ぼし、最近の水害からもわかるように落ちてきた水の浸透性などについても、すごいバランスを崩してしまっている。
それによって引き起こされている気候変動。人類の最大の危機になっている。僕たちの活動が変化しない限り、どんどん悪化していく。持続的な農業を、という問題を通り過ぎてしまっていて、農業そのものが環境を再生するような再生的なものにならないと。自然がどう循環していくかを農業の中にどう組み込むかがキーだと思う。
この園庭を、この土地を再生するようなものにしていけたらいい。まずは土。土がどんどん肥えていく仕組みを導入する。生物多様性が増えていく仕組みや、水の浸透性、空気がどれだけ土の中に入っていくかなどを考え、森がやっていることをやまのこの庭でやっていきたい。しなくていいことは何もしない、しなくていいことは勝手に再生していくから。子どもの遊び場、学びの場は複雑な機能を求められるからそれも考えながら、同時にここの虫や鳥の生物多様性を豊かにしていけるような仕組みを。」
この土地を再生するような農業(食べ物作り)を実現するための仕組みづくり。田川からいただいた竹を使って、私たちのゴミが土に還るための大きなコンポストを作りました。いま、毎日の給食の生ゴミはこの土地を再生させるものとして、コンポストに入れられるようになりました!
(3)おわりに/In Conclusion
9月と11月の計4日間は「人と人が地球で暮らす」上で必要不可欠で、とても愛しい「繋がり」をみんなで思い出すようなワークの連なりでした。講師のフィル・キャッシュマンさんはじめ、ボランティアでお越しいただいたパーマカルチャーの実践者小久保ひろしさん、心が満タンになる食事をつくっていただいたUmui Emikoさん、Day by Dayさん、食道ささきさん、情報とマテリアル提供をいただいた真田治雄さんと五十嵐大輔さん、そして参加いただいたみなさま、本当にどうもありがとうございました。