やまのこ保育園

惑星のようす

"人とのかかわりから生まれるもの"

2021.02.01
人とのかかわりから生まれるもの

Text : Ichiro Kanai

 子どもたちの姿を記録する時に「5つの視点」(関心を持つ、熱中する、困難ややったことがないことに立ち向かう、他者とコミュニケーションをはかる、自ら責任を担う)でエピソードを分けています。視点のひとつに「他者とコミュニケーションをはかる」という項目があるのですが、本稿では、子どもたちがどうコミュニケーションをとっているか、という視点で日々の保育を振り返ってみたいと思います。

 ふき組の子どもたちの姿からご紹介します。

1月13日 Gちゃん
泣いているが、大人が近くに来ると自分からおしりで移動してくる

1月21日 Yちゃん
Sちゃんが抱っこして〜という様子で近づいてくると、私の方が先よ〜!という感じでSちゃんを押す

1月21日 Rくん
Aちゃんが泣き、Sさんが抱っこしていると、時々自分も〜という様子で近づいてくるが、他に興味があるとスタスタ歩いて自分の遊びに夢中になっている

1月22日 Yちゃん
今日もAちゃんのところへ来て声をかけている。新しく来た友達に興味津々の様子。嬉しそうな表情!

 言語が用いられることは少ないものの、泣く、近づく、押す、笑いかけるなど、様々なやり方でコミュニケーションが生まれています。大人との関わりで安心感・信頼感が育まれていたり、他の子どもの存在を感じて関わる様子も伺えます。

 次に、わらび組の子どもたちの姿です。

11月18日 Aちゃん
Sちゃんのブランコを押しながら「Sくん おわったらかわってね」と話しかける

11月19日 Sちゃん
お昼寝前の絵本コーナーでKちゃんにぶつかると、すごい勢いで怒られている。すると「ごめんね〜」と言うSちゃん。

12月9日 Tちゃん
お散歩中、手を繋いでいたSちゃんが座り込む。しばらくすると心配そうに顔をのぞきこみ「Sちゃん、いっしょにいこ」

1月19日 Fちゃん
home園庭 遊んでいてHくんが庭に出てくると「ありがとうきてくれて」

1月26日 Hくん
散歩中前を歩いているFちゃんをたたく。「何か伝えたいなら話してみれば?」と伝えると「ねぇねぇFちゃん」

1月28日 Zくん
トイレ介助のときなど、笑いながらけっこう強く顔を叩いてくる。「いやだからしないで」と伝えると、笑いながら続ける

 言葉や表情、仕草によって多様なコミュニケーションを生み出しています。大人が介入しなくても、子ども同士で自分の希望を伝えたり、相手の気持ちを察するような姿が見られます。何を言われるでもなく他者を思いやる子どもたちを見ていると、人間はもともと利他の心を持っているのではないか、と思います。また、遊びのひとつなのか関わりたいという気持ちからなのか、読みとるのは難しいのですが、相手を叩くことでコミュニケーションが発生することもあります。叩く、押すなど、受け取った相手が快くないであろうかかわりがあった時、保育者はどのように伝えたらいいか、日々試行錯誤しています。

 記録を見ていくと、子どもたちがどう他者とかかわろうとしているかが見えてきます。叩く、それをされて泣く、といったかかわりが多く起こることもあり、そんな日は保育者も子どもに対して「自分の気持ちは言葉で伝えて欲しい」「自分がされて嫌なことは人にもしないでほしい」という思いが強くなってしまうこともあります。しかし何よりも大切なのではないかと思っているのは、毎日のかかわりの中で「あなたは大切な存在である」と伝え続けることです。そのために、任せて見守り、思いを汲み取れるよう寄り添い、快い方法を提案するなど、一人ひとり、その時々でどうかかわるか、応答をオーダーメイドのように考え続ける姿勢でいたいと思っています。

 自分自身を大切に思う気持ちが、他者を大切に思う気持ちにもつながっていき、その気持が人間以外の命や物を大切に思う気持ちにも広がっていくのではないかと思います。

 他者とかかわることで、子どもたちの心に生きることの素晴らしさが積み重なり、これからの人生を生きていく土台になればいい。そんなことを考えながら、子どもたちと一日一日を過ごしています。

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