やまのこ保育園

惑星のようす

"0さいの人といることで生まれる風景"

2021.02.01
0さいの人といることで生まれる風景

Text : Yurika Murata

0歳児の子ども達にとって、大人との愛着関係を築くことがその後自ら世界を広げていくために大切であると言われています。そのため昨年のコロナ到来まで、0歳児うるい部屋はなるべく人の行き来を少なくして、子どもも大人もゆったりと過ごせるよう1-2歳児こごみ組・3-5歳児あけび組と繋がる扉や間仕切りは閉めていました。そんなうるいの環境が2020年度、大きく分けて3回変化をしました。2021年度が始まろうとしている今、その変化をうるい・こごみ部屋の構成と0.1.2歳の子ども達の姿に焦点をあて、改めて考えてみました。

 

1.まぜこぜのスタート(うるい・こごみの間仕切りOPEN)

 6月から始まった「まぜこぜ」グループ。0歳から6歳までの子ども達が火・木曜日は「ツバメ」と「メダカ」に分かれての朝の集い・散歩・食事の時間を一緒に過ごしました。また、0.1.2歳児は毎日あけび部屋でご飯を食べ、こごみ部屋で昼寝をしました。 

 まぜこぜの期間中、うるいとこごみの間にある仕切りは常に開かれた状態で、2つの部屋を1つの空間と捉えて環境を構成しようとしました。部屋をより広く活用できるので、ごっこ遊びコーナーや五感を刺激するコーナー、アトリエコーナーなど、様々なアイデアが浮かびました。しかし、大人も子どもも混ざり合うということに精一杯になり、実際に環境を整えるというところまでは正直なところ、到達できませんでした。

 まぜこぜが始まった当初0歳児の子ども達の中には、活動がダイナミックなこごみ・あけびとの違いやそれまで関わる機会があまりなかった大人に戸惑ったのか、保育者に抱きついたまま午前の活動時間を過ごすこともありました。

  しかし、子ども達の姿は日々変化をし続け、約1ヶ月経つ頃には、大きい人達とかくれんぼをしたり、お茶を分け合ったり、隣の席で食事をしたりといつの間にか自然と同じ空間を共有するようになっていました。

2.キッズドームソライにお引越し(うるい・こごみが1つの部屋に)

  まぜこぜが定着してきた頃、浸水被害により一時的にキッズドームソライの学童保育部屋をお借りしました。この期間、0.1.2歳児は1部屋で朝から夕方までを共に過ごしました。すぐに外へ出られるという環境ではなかったため、子ども達は必然的に一緒に積み木をしたり、絵本を読んだりと密に過ごすことが増えました。この期間の中で、0.1.2歳児が共に過ごせるイメージがより明確になりました。

 

3.現在(うるい・こごみの間仕切りCLOSE…)

 キッズドームソライから戻ってきた後、再びまぜこぜを始めるかを全体で話し合いました。そこでは、すでに子ども達は年齢を越えて共に生きる関係ができているから、まぜこぜの時間を組み込まなくても良いのではないかという結論に至り、昨年春以前の時間の流れに戻りました。

 うるい、こごみの環境を1つにするか悩みましたが、ちょうどその頃生後6ヶ月のAくんが入園することもあり、いつでも安心して過ごしたり眠ったりできる環境を確保することが先決だと考え、再び間仕切りを閉めました。昼食をそれぞれの部屋でとり、昼寝は1歳になったHくんとSちゃんはこごみで、Eくんはうるいで、ということにしました。

 間仕切りを閉めてからの3ヶ月、仕切りはあるけれども子ども達は行きたい時にうるい・こごみ部屋を行き来し、そこに壁は無いように感じています。半年かけて培われた混ざり合う、共に生きる感覚は、子ども達にとって自然なものになったのだと思います。私がこのように感じたエピソードを2つ、共有させていただきます。

Nちゃんの靴

 Nちゃん(1月入園)のスノーブーツを大人が履かせようとする姿を見て、「E、するー」とEちゃんがやってきました。マジックテープを剥がして履かせようとしますが、どうにもつま先が入りません。隣で見ていたBくんが「Bくんが」と手伝おうとしますが、Eちゃんがもう少し自分でやりたそうな様子を見て、「ここ(マジックテープ)、開いたらいいんじゃない」とアドバイス。つま先だけしか入れることはできなかったけれど、「できたー」とホッとしたような表情。手伝ってあげたよ、と満足そうな笑顔を見せるEちゃんとBくんでした。

 

Aくん、寝てるから

 先にご飯を食べ終えたAくんが昼寝中の出来事でした。こごみの子ども達は昼食を取りにうるいの部屋を通って調理室へ行くところ。一足遅れてその後を「あー!」と大きな声を出して追いかけようとするNくんに「Nくん、みて」と言いながら私はAくんの方を指差しました。すると、少し小さな声で「ごめんねー」と言ってみんなの後を追いかけて行きました。そして、調理カートを押しながら再びうるい部屋の前に来た時、「ねえ、Aくん寝てるから、小さな声で行くよー」とみんなに呼びかけるNくんの声が聞こえました。

“自分よりできない赤ちゃんがいると、人は気にかけて自分のできることを

してあげたくなる。差異が生まれることで行為され、そのことによって自己の存在を

認識し、そして他者の気持ちがわかるようになる“

 「21世紀型保育の探求」(大豆生田啓友 編著、フレーベル館刊)という本の中で、こんなふうに0歳の人と共に暮らすことについて述べられています。

 今の子ども達の様子をみて、間仕切りは閉めたままでうるい・こごみを1つの部屋として環境を設定できるのではないかと心を踊らせ、再びゆっくりと始動しています。具体的には、1月末から元々は各々の部屋にあったおままごとコーナーをこごみ部屋に、積み木など構成遊びをうるい部屋に集約して設定しました。まだまだ道半ばですが、子ども達が遊びたい場所を自ら選択して過ごせる環境を、子どもたちと共に少しずつ作り上げていければと思います。

 

RELATED

BACK TO TOP