やまのこ保育園

惑星のようす

"やまのこ商店街の当日"

2021.05.01
やまのこ商店街の当日

Text : Yuki Baba

2021年3月30日にやまのこ商店街がオープンしました。その様子が私の目にどう映ったか、私の視点を共有させていただきます。
やまのこ商店街のオープンを告げる鈴の音が鳴り、SOちゃん、KIちゃん、Jくん、Hくんたちの「いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!」という大きな声が何度も園庭に響き渡りました。次第にお客さんの数も増え、賑わいを見せるやまのこの園庭には、SOちゃんの何でも屋さん、Mちゃんの歌のステージ、YちゃんとKOのお菓子屋さん、KAちゃんの手品屋さんなど、主に年長さんによるお店が並んでいました。
Mちゃんはたくさんのお客さんに緊張しながらも、お客さんの手拍子に合わせて、レット・イット・ゴーを歌ってくれました。KIちゃんのガシャポン屋さんには長蛇の列ができ、KIちゃんが対応に四苦八苦するほどの賑わいでした。

EちゃんがKAちゃんのお店にポシェットを忘れた時、KAちゃんはポシェットをEちゃんに返そうとして、SAちゃんにポシェットと*10yamanokoを渡しました。SAちゃんはお駄賃をもらって、Eちゃんにポシェットを渡しに行っていました。ポシェットを渡したSAちゃんは、もらったお駄賃で、KIちゃんのガシャポン屋さんに並びました。SAちゃんは無事ガシャポンをゲットし、ご満悦でした(*10yamanokoとは、やまのこ商店街本番の日に流通するお金のことです)。

KAちゃん、SAちゃん、Eちゃんの関係性が生成したように、私が把握できていないところで、色々なお店で、色々なコミニケーションが繰り広げられていたんだろうなと想像します。

あの日、私は、もはや園庭はいつもの園庭ではなく、まさしく「やまのこ商店街」に変わったと感じていました。園庭という場所で、いつもは交わることの少ない大人と子ども、子どもと子ども、大人と大人が「お店の人」と「お客さん」という役割として交わったことで、新しい空間が立ち現れ、賑わいを見せていたことに驚きました。

普段、子どもたちがしている遊びに、砂や泥をご飯やケーキに見立てる「見立て遊び」がありますが、今回の商店街のプロジェクトは子どもも、保育者も保護者も巻き込んだ壮大な見立て遊びなのかもしれないと思いました。想像力とそれを表現する力、そして他者の想像を受け取る力があれば、段ボールがお店という広がりを持った空間になり、紙がカレーやお菓子や剣にもなる。想像の共有が3人や4人の範囲で完結せず、商店街に参加した40人くらいの人たちで共有することで、いつもの保育園がやまのこ商店街という場所に変わるのです。

正直に言うと、商店街プロジェクトが発足してからの準備期間中、私は「本当にこのプロジェクトは成立するだろうか?」と不安でした。それは、大人数で「見立て(想像)」を共有することの難しさからくるものだったのかもしれません。

しかし、当日は、ググッとみんなが夢中になって、一つにまとまる感覚があり、大人も子どもも、園庭という場所を商店街に見立て、買い物とそのコミニケーションを楽しんでいたように感じます。人が出会う、豊かな空間になっていたことに感動しました。この景色を誰が想像できていたのだろう、このプロジェクトを卒園の前の大きなプロジェクトとしてやろうと、作っていった子どもたちと保育者に、率直に尊敬の念を抱きました。こんなに豊かな空間を作ることができるなんて、本当にすごい!

想像を共有することの難しさをクリアできたのは、保護者のみなさんが本物の「お客さん」という最後の要素として、揃ってくれたからこそなのではないかとも思っています。どのピースがかけても完成しなかったやまのこ商店街。本当に子どもたちにとっても、私にとっても、大きな経験になったと感じています。

 

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