やまのこ保育園

惑星のようす

"七夕2021ドキュメント 自分の既成観念と向き合う"

2021.07.30
七夕2021ドキュメント 自分の既成観念と向き合う

葉っぱの水滴から雨水を集め、それで墨をすり、その墨で描き、これらの行為全体を「祈り」として捉える、2019年からのやまのこの七夕スタイル。保育者の朝子さん、優樹さん、朋子さんの3人で今年の七夕を振り返りました。

Text : Asako Sugano

今年の七夕当日、homeのAちゃんが真っ白の洋服を着て登園したので保育者が保護者に「今日は墨を使いますが大丈夫ですか?」と確認したところ、「初めて墨と出会う日なので記念に白い服を着てきました」というお返事があったという。

このエピソードを聞いた時、その白いシャツはどんな素敵な墨模様になるのだろうと想像すると同時に、白い服を着るという発想が自分の中に全くなかったことに驚きました。「墨を使うので子どもたちは汚れても良い服を着ていることが望ましい」という私の既成観念には、突き詰めると、紙に描かれた墨は「作品」、それ以外の場所についた墨は「汚れ」という捉え方が潜在的にあるのではないかと気づきました。

そしてこの気づきは、「プロセスを大切にする」という根本的な子どもとの関わり方と私自身が改めて向き合うきっかけになりました。こごみ組の子どもたちが墨のついた筆を振り回し走りまわる姿に「あ〜そっちは床にシートを敷いてないから掃除が大変になるな、もっと養生してあるこっちでやってほしいな」と思ったり、体に塗りたくりその感触を楽しむ姿に、「紙に描く分、残るかな」と心配してしまったりしたことを思い出すと、次はもっとその場の一瞬一瞬を一緒に楽しみたいなと反省しました。

七夕飾りを作る、というような成果物を目的とした活動にせず、水を集めて墨を作る、墨に触れるという過程を目的とするやまのこの七夕の在り方が示すように、私自身が今後の生活の中で子どもたちの姿そのものを心から慈しむことができるようになりたいと思いました。

やまのこhomeの保育者 美奈さんもまた、七夕の振り返りの中で、保育者が用意した厚紙だけでなく、一人ひとりが身の回りのものを通して墨と出会う姿が興味深かったという話をしてくれたのでそれぞれのシーンを紹介します。

 

Zくん
カーボネイトのように向こうが透ける事務所の扉へ墨で描こうとする。墨の一粒一粒が弾けて浮き出てくる様子を観察する。

Syくん
床に敷いていた白いビニールシートに枝の先に墨をつけて描き出す。ビニールシートが墨を弾くのを楽しむ。

 

Gくん 
まつぼっくりを握りながら厚紙の上に墨を転がしながら描く。直接手では触れないが、何かを使って墨を触ってみたい!という気持ちが伝わってきた。

 

Srちゃん 
トレイの中に入っていた墨を思いっきり紙の上にひっくり返していた。じわ〜っと広がる墨の水溜りに両手で触る。

七夕の行為全体を「祈り」として捉えるというテーマの中で、子どものあらゆる行為を表現として受け取ることの奥深さに改めて向き合うことができたと感じています。私にとって今年の七夕は、子どもたちの自由な表現を側にいる大人としてどれだけ保証し、共に楽しむことができるのだろうか、という問いにつながりました。

 

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