2023.03.29
いちがつにがつ|はじまりと春
Text : Tomoko Nagao
やまのこ全体のこの2ヶ月を記録しようと出来事を並べてみると、出来事一つ一つに想いやエピソードがありますが、全体を通して「春」や「年度の切り替わり」に向かっていることに気がつきました。そこで、一つ一つの点(出来事)を語るのではなく、点がつながりあってできた線として全体を振り返り、出来事同士が互いに影響しあって生まれた流れを見てみようと思います。
1/9 職員研修ことはじめ 1/12 yamanoko荘内神社へ初詣 1/13 新春アフリカンドラムお祝い 1/28 ペアレンティングクラス もちつき&子どもニーズカード 1/27,2/10 リクルートツアー、保育者絶賛募集中! 2/3 節分 2/4-5 職員研修合宿 2/8,15 17,19 味噌づくり 2/19 内定者向け入園説明会(と「やまのこのしおり」大編纂) 2/20 卒園カラカラチームの劇。キッズドームソライに行くための資金調達達成! 2/22 home餅つき/仲間を送る |
やまのこの年末年始
2023年始の話をするには、2022年末の話をする必要がありそうです。やまのこの年末は、11月末、山伏の松の勧進の法螺貝の音にはじまり、保護者の方々との大掃除や、子どもたちとの年賀状作り、鏡餅用の餅を作る餅つきをして、雪の羽黒山で新年用のしめ縄をお清めし、最後に門松を子どもたちと作って飾って年を納めます。そして年明け、それらの鏡餅、しめ縄、門松に玄関で迎えられまして、今年は初めて2-5歳児全園児で氏神様である荘内神社に(どんど焼きに焚き上げてもらう品々を携え)初詣をし、最後にスペシャルゲストを迎えた「アフリカンダンス/ドラム 新春お祝いコンサート」にて0歳から大人まで、みんなでアーティストの歌とダンス、そしてドラムの鼓動・波動を通して、私たちのコミュニティの新年を祝いました。
子どもたちの春支度
1-2月は冬から春への移行期間。冬の最後の日(大晦日)にあたるのが節分です。0-2歳の子どもたちは、翌日の立春を前に、春の芽吹きの象徴でもある種を庭に撒きました。種はこれまでガーデンで育ててきた草花から採取し保存していたやまのこシードストックより。果たして春に芽は出てくるのでしょうか、「鬼は〜そと!」ならぬ「お庭〜咲け!」でした。2-5歳の子どもたちは数日前から、ここ数年、節分になると現れる「異界からのお客さん」の話をしたり、保育者が紹介したユネスコ無形文化遺産である来訪神(いつも人々のそばいる神ではなく、他所からやって来る神のこと;秋田のナマハゲや遊佐のアマハゲなど)の動画を見たりしていました。その影響か、節分の数日前、突然遊びの中でダンボールの獅子が作られ、獅子舞が始まりました(きっかけはプリンセスごっこのために出した1枚の長い布だったようです)。節分当日はお囃子が流れる中、子どもたちが獅子舞や豆撒きをしていると、赤い顔のお客さんもやってきて部屋の中をぐるりと巡り、舞い去っていきました。
節分=鬼、豆まき!ではなく、節分=冬から春の切替の日、お祓いや祝いの意味を持つ文化的経験、異界からの来訪者など、根っこの意味を問い、子どもたちの年齢に応じた経験をデザインする。そんな保育者たちの姿勢が感じられました。
もう一つの春支度(次年度支度)は、味噌づくり!来年度やまのこごはんで食べる一年分の味噌を子どもも保護者も保育者も総動員で仕込みました。各園2回ずつ、計4回、88kgの味噌を仕込みました。加えて、ぜひ我が家の味噌も手作りしたい!と保護者の方々が企画され、休日に園を会場にファミリー味噌作りも行われました。やまのこで(保育を通して)味噌づくりに出会い、こんな簡単にできるんだ!と家でも味噌を仕込むようになったご家庭が複数あると聞いています。当日は兄弟児の卒園児が一緒に混じったり、年長児家庭からは「卒園してもまた味噌作りしたいですね!」と声があがったり、やまのこと家庭の繋がりを嬉しく思います。やまのこコミュニティの人々の(手の)常在菌でより一層美味しくなった味噌を食べあい、在園期間を越えて菌の次元で繋がっていられるなんて面白いなと感じました。
大人たちの春支度、まなざしの共有
今年度最後のペアレンティングクラスや、2023年度入園の内定者向け説明会、「やまのこ 生活のしおり」のアップデートや、来年度に向けた保育者研修などを1-2月に行いました。
ペアレンティングクラスは、つながり隊の保護者の皆様が企画から協力くださって、保護者企画の大人餅つきと、保育者企画の子どもニーズカードの紹介ミニワークという2部構成でした。ぺったんぺったん餅をつき、丸めて食べるという子どもの経験を追体験する身体を使った時間で場が温まり、後半の「子どもニーズカード」(NVC=Nonviolent Communicationという人の感情とニーズを大切にするコミュニケーション手法に基づいて作られたツール)を使ったミニワークにつながって、最近感情的になったエピソードを紹介しながら、その時に大切にしたかったことなどを振り返りました。自分も相手も大切にしながら、互いのニーズ(叶えたい!とその生命が欲するもの)を差し出し関わりを探していく。そんな、日々子どもと向き合うときに保育者が心がけているコミュニケーションの世界観を、保護者の方々と共有しました。
内定者向け入園説明会では、「子どもとの暮らしをたっぷり楽しむために」という視点で、複数の大人の目で子どもの育ちを見守り、互いの視点を交換して違いを楽しむことや、子どもの思いと自分の思いによく気がついて、子どもも大人も暮らしやすくなっていく方法を探していくことなど、保育者が普段実施しているアプローチをワークショップ形式で、これからやまのこ保護者に仲間入りしてくださる方々と共有しました。
保育者研修合宿では、やまのこ全体として、或いは各園で、2023年に力を注ぎたいことについて、丸1日半をかけて話し合い、言語化しました。
これらの大人の機会はいずれも、子どもの育ちの近くにいる大人として、大人同士(それが保護者と保育者であっても、保育者同士であっても)まなざしを共有するためのものだったように思われます。大人同士がまなざしを共有することで、子どもの育ちを願い、子どもとの暮らしを共に生きる者としてのパートナー感が醸成されている感触を覚え、非常に心強く感じられました。
これらは行事か?日々の営みか?
最後に、職員研修での一場面のご紹介です。年末年始の一連の出来事について職員間で話をしていたときに、「え!門松作りって行事?」と、「これらは行事か?日々の営みか?」という問いが上がりました。実にやまのこらしい問いだと感じます。
大掃除や餅つき、コンサートなど、保護者の方々に集まっていただいたものは、確かに行事のようですし、行事とも言えます。が、保護者の方々が園にいる光景=(特別感のある)行事ではなく、保護者の方が気軽にやまのこに来て子どもたちと経験を共有することは、私たちが実現したい日常の光景だと気づかされました。また、山伏の来訪〜お祝いコンサートまで、そのどれもが、より良く皆で一年のはじまりを迎えるための暮らしの営みであり、日常に付加的に行われる特別な行事としてではなく、季節に応答的に生きる日常の連なりであり、やまのこの保育そのものだと感じました。
一般的に保育園行事というと、日常の保育にプラスして職員が計画や準備に追われるもの、とか、保護者の方々にとっては今度◯◯があるのね!と特別に備えるものというイメージがあります。もちろんやまのこでも計画や準備をして臨みますし、保護者の方々にとって、大掃除や餅つきは(今は)特別な行事的なものかもしれません。今後もスケジュールを共有をしながら保護者の方々も一緒に暮らしを楽しめる機会を積極的に作っていきたいと願いますが、今回この問いを通して自覚したのは、私たちは予め計画され行事に見えるこれらの出来事も、日々の保育に付加的に行う特別なものとしてではなく、できる限り日常と切り離されない自然な営み/保育として捉えていきたいと思っているということ。それはまた毎日が特別の連続、季節の営みの連続であるということかもしれませんが、これぞやまのこの日々の在り方だと改めて認識しました。餅つきや味噌作り(のような季節の営みのあれこれ)が行事ではなくどんどん日常になっていく。そんなやまのこの日常/保育を作っていきたいと願います。