やまのこ保育園

惑星のようす

"やまのこキャンプ レポート"

2019.10.04
やまのこキャンプ レポート

Text:Aya Endo

8月2日3日の1泊2日で「やまのこキャンプ=お泊り保育」を行いました。1泊2日をどう過ごすか、その日に向けてどんな活動を行うのか。6月から何度かあけび組(3-5歳クラス)の大人たちでミーティングを行いながら内容を考えました。あけびの探求テーマとしては、5月6月で「水の探求」を行っていたことから、その展開で水がどこから来ているのかを探ってみるのはどうか、ということも話し合われたのですが、子どもたちが心から楽しいと思える活動が中心にすべきであり、大人が出会わせたい何かを設定しすぎるのは少し違うのではないかということになっていきました。

そんな話し合いの中で、結果的に水の探求につながるかもしれない可能性もありながら、子どもたちが楽しく活動できる「海」をメインフィールドにしてみようということが決まりました。海で遊ぶことは決まったが、食事づくりはどうしよう。どうやってメニュー決めようか。という話し合いの中で出てきたのが、食材調達をお店で購入する以外の方法で子どもたち自ら行う、というアイデアでした。そうすれば自ずとメニューを考えるプロセスの中にも、たくさんの発見や学びが含まれていくことになります。

そして、海は遊ぶだけではなく、食材調達のためのフィールドになります。せっかくだから、釣りのための道具(竿や網)も自分たちでつくろうということになりました。庄内竿の職人さんに相談しに行き、実際に園内で制作していただくことはできなかったのですが、子どもサイズの庄内竿を分けていただき、自分たちでも木の棒に糸をつけて簡単なものを制作しました。網は見様見真似で竹と紐でつくりました。加えて、漁師さんに来てもらって鶴岡の海でとれる魚についてお話もしてもらいました。

海だけですべての食材の調達はできませんので、野菜類の調達について子どもたちと相談することにしました。メニューを考える中で、「ホットドックはどう?」というアイデアが出てきたのですが、「ホットドックは何でできている?」という大人の問いかけに「お肉」と子どもたち。「それじゃあ、お肉はどうしたら手に入る?」という問いかけに「うーん」と考えます。「牛は殺していいんだよ」「牛、殺しちゃうのかわいそう」「でも、人間が生きるためには殺していいんだよ」「でも、痛いよねぇ」と心を動かしながら対話がすすんでいきます。

 

牛は殺せないけど、野菜は自分たちで育てられる。育てている野菜はまだ量が少ないから足らないなぁ。どうしよう?ということで、野菜をどうしたら手に入れられるかを考えました。「交換すればいいんじゃない?」というアイデアから、自分たちが野菜と交換してもらえるモノ(アクセサリーや絵、粘土の置物、コーヒー、梅ジュースなど)をつくって野菜と交換するための市場(あけびOPENDAY)を開くことになりました。その日から精力的に交換のためのものづくりをスタートさせました。描いた絵もダンボールをカットした額縁に入れるなどして工夫すると、家に飾っておきたいと思うような作品になるから不思議です。あけびOPENDAYは、保護者のみなさんやSpiber内で呼びかけただけでしたが、2日間にわたってたくさんの方が訪れてくださいました(みなさんのご協力に感謝を!)。

子どもたちは自分がつくったものとは知らずに、これいいね!と知らない大人が選んでくれた事実、自分がつくったものがかぼちゃと交換されたという事実を通して、「自分は他者に影響を及ぼす力のある存在なのだ」という感覚を強くしたのではないかと思います。そんな心の豊かな膨らみも収穫しつつ、楽しい物々交換で八百屋さんができる程の食材が集まったことには、本当に感激しました。

8月2日当日。少しの緊張とワクワクした気持ちで迎えた朝がやってきました。バスに乗り込んでほどなく湯野浜海岸に到着。

子ども2人に大人が1人つく体制で、たっぷり海の中で遊んだり、魚釣りや貝とりに挑戦しました。子どもたちの声や表情がにぎやかに行き交います。お弁当の時間の前に、水源探しの旅を大人たちは計画していました。自然と水源へと誘うために、Tくん(あけび組保育者)がその発見のポイントとなる場所へ移動します。「T、どこ行くのー?」と後ろから小走りでついていく子どもたち。波打ち際を歩いてたどり着いたのは海と山をつなぐ仄暗いトンネルです。

トンネルに「おーい」とよびかけると音が向こうの方まで響いているのがわかります。「このトンネルの先に何があるんだろう?」Tくんの呼びかけに、じっとトンネルの先をみつめる子どもたち。少し間をあけて「行ってみよう」と一言伝えて、トンネルの上の道を登っていきます。

 

たどり着いたのは、小さな生活水路。階段を降りてその先に向かいます。向かった先にあったのは、森の水が流れ込む小さな滝壺でした。腰まで水に浸かるくらい深い、天然の貯水地の中に入っていきます。このときのためにご家庭から用意いただいたペットボトルの口をチョロチョロと流れる滝の水の中にいれてそれぞれに水をためます。さっきまで体を浸していた生あたたかい水と違う、山の水の冷たさを全身で感じながら。

 

滝壺探検を終えて、海に戻りお弁当をいただきました。
午後もまた海で1時間程度磯遊びや海遊びを愉しんで、身体を洗い、着替えてから、バスでやまのこに戻りました。

保育園に戻ると一息ついて、お風呂の時間です。今回、ご厚意でお風呂を使わせていただけることになったスイデンテラスの温泉に入ってさっぱり。ゆっくりと沈んでいく太陽の光の中で班にわかれて夕ご飯の支度をはじめました。捕まえたカニや貝をスープに落とすと、さっきまで動いていたカニは次第に赤く色づいていきました。

 

ごはんをつくっている間に、ゴールドウィンさんのご厚意でお借りすることができた大きなテントをはります。静かに日が暮れていきます。貝ごはんと魚介と野菜がたっぷり入ったスープを頬張りながら、このごはんの中に、今日までの子どもたちの時間すべてが滲み出しているように思いました。

 

テントで寝る人、部屋で寝る人の希望をとって8時過ぎにはそれぞれの寝場所へ。無事に朝を迎えることができました。いつもと違う特別な朝。子どもたちの少しくたびれた様子を見て、朝ごはんの準備は大人で行うことにして、子どもたちは朝の散歩に。散歩から戻って朝ごはんを食べたらサークルタイムです。

海で見たこと、遊んだことを一枚の大きな絵にしてみようとCさん(あけびクラス保育者)から呼びかけて、屋外のタープの下で絵を描くことにしました。水しぶき、岩、海の色、カニ、いろんなものがそれぞれに描きこまれていきました。
そうこうしているうちにお迎えの時間がやってきました。スイカ割りをしてみんなでいただいたら「また月曜日ね!」といつものように別れていった子どもたち。その日の家族の食卓では、どんな話が飛び出したでしょうか。

 

最後に、保育者の柏木拓人さんによる8月5日の日誌から抜粋して紹介させていただきます。


人は、時間を共に過ごすことで相手のことを知ったり、自分のことを知ってもらったりするのだと思います。いろいろな人と知り合い、遊ぶことで自分の世界は拡がっていき、様々な課題への対処方法を学んでいくのだと思います。自ら学ぶということには時間がかかり、負荷もかかりますが、腑に落ちるまで待って掴んだ学びには、生きていく上でかけがえのない力が宿っていると感じています。(中略)たくましく成長していく姿を保護者のみなさんと共に見守っていきたいと思います。

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