やまのこ保育園

惑星のようす

"それは渋柿からはじまった"

2018.12.15
それは渋柿からはじまった

Text : Chihiro Taniguchi

11月のあけび組は、活動目標に『自分たちが手を加えたものを食べることで食物や自然と繋がっている感覚に気づく』としていたのですが、そんな時丁度、調理員のよしこさんとMくんのおうちからたくさんの渋柿をいただいたので、待ってました!と干し柿づくりに挑戦してみることに。

Day1—つくる

子どもたちの視線は、柿の皮を剥くHさん、Mくんのお母さんの手元に集まります。やってみたい!という気持ちが溢れ出していましたが、あけびのみんなの仕事は皮むきの次の手順、「お湯に5秒つける」→「霧吹きで焼酎をふりかける」→「クリップにつける」の3つ。とても根気の要る活動です。途中、食べたい気持ちを抑えられずにかじってしまうSちゃんとKちゃん。強烈な渋みにクシャクシャな表情になっていましたが、それをみた周りの子たちもかじってみたくなって…。やっぱり同じ表情になっていました。渋い経験をしながらも50個の柿を、やりたい人がやりたい時に参加するという自由な空間の中でなんとか干せる状態までになりました。

青空の下、棒に吊るした柿を見上げて『うわー!すごい!』と声が溢れていました。達成感のようなものを感じていたのかもしれません。空の水色と柿のオレンジのコントラストも見事でした。

 

Day2—気づき
数日後、干し柿の変化に気づきます。『あれ?!ベタベタしてない!』『プニプニしてる!』触覚を通しての気づき。別の子は『なんか色が変わった!』視覚を通しての気づき。これらのやりとりから、”なぜ干すのか” ”いつまで干すのか”という疑問が湧いてきました。するとその投げかけに対して『濡れてたからじゃない?』と返す子もいて、”干す”という行為に「?」をたくさん感じているようでした。

 

Day3—値付け
 

soraiの園庭は雨風が厳しい環境です。柿たちは雨も風もかわいそうなくらいさらされていましたが、その環境がかえってよかったのか3週間で色づき、みんなで試食してみることに。紐からはずしているときも食べたくて仕方がない様子でした。早速食べてみると、『おいしい!』と『おかわり!』が止まりませんでしたが、おかわりしても食べきれないほどの山盛りの干し柿をどうするのかをみんなで話し合う展開へ。

保育者は、12/9のやまのこマルシェで販売したいな、と思っていたのですが、子どもたちの思いは違うところにありました。『ほかのクラスのみんなにもあげたい!』という意見が出てきたのです。しかも『やまのこhomeのみんなにも!』という声も上がったのです。園舎は離れていても”やまのこ”をひとつだと捉えてくれていることが嬉しい発見でした。みんなで分けることに子どもたちは大賛成の様子でしたが、分けても沢山残ってしまうことに気づき…。結果、残ったものをマルシェで販売しようということになりました。

次に話し合ったのは、干し柿1つをいくらで販売するかです。『一万円!』『五円!』『一円!』と値付けが次々に飛び交います。実際にテーブルに硬貨を並べて、干し柿がお金に変わると、そのお金で別のものを買うことができる、という簡単な”通貨”の役割についても話をしました。子どもたちは、お金の価値はまだよくわからないけれど、話を聞きながらそれぞれに懸命に考え、発言している様子が印象的でした。最終的には、Sちゃんの『30円がいい!30円しか考えられないよ〜!』という発言から、少し発展させて『30円以上だったらいくらでもいいってのはどう?』と提案してみるとみんな大賛成。みんなの話し合いで値段も決めることができました。

 

Day4ーマルシェに向けて
 

数ヶ月前からあげび組ではおみせやさんごっこが盛んに行われており、戸外のままごとあそびでも発展がめまぐるしい日々を送っていました。

オープンデイでやまのこにお客様を迎える。この機会に子どもたちと一緒にごっこではなく、本当のお店をやれないだろうか、と考えるようになり、マルシェの2週間前から準備が始まりました。”日々の活動の中から無理なく、やれることを子どもたちに手渡していく”という感覚で、〈塗り込む〉という活動からヒントを得てチケットのデコレーション。〈文字への興味〉という姿からヒントを得て看板作り。日課になっていたコーヒーミルの活動から繋げて子どもコーヒースタンドのプロジェクト。などなど、全てが日頃の活動の発展形でした。やまのこは「暮らしの場」なので特別な準備は必要なかったのです。

 

Day5ーお店番

あけび組の数名は30分交代でお店に立ってくれ、日頃のおみせやさんごっこの甲斐もあり、『いらっしゃいませ〜!』『おいでくださーい!』とお気に入りの組み木のおうちの窓から顔を出して、お客さんに声をかける子どもたち。自分たちが作ったチケットで販売すること、自分たちがつくった干し柿とお金が交換されることを体験した子どもたちは満たされた表情をしていました。オープンデイが終わった今でも、『楽しかったよね!』『お客さんいっぱい来たね』『干し柿あげたもんね』などと日々の会話の中でよく話題にあがっています。”自分たちがお客様をお招きした”という充実感を感じてくれているようです。今後、干し柿の売上を何に使うかも話し合う予定にしています。さて、何に交換されるのか..。

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