2019.12.31
2019年をふりかえって
Text : Aya Endo
いよいよ2019年も残すところあと僅かとなりました。やまのこの12月は、専らお正月を迎えるため、餅つき、しめ縄や門松、年賀状制作等を子どもたちとすすめながら過ごしています。各ご家庭では、どのようなお正月準備をされるのでしょうか。また、2019年はどんな1年だったでしょうか。
やまのこの2019年をふりかえると、宝の山の中を歩いているような、幸福な瞬間に満ちていました。飛び上がりたくなるような嬉しいこと、じわじわとした幸せがたくさんある一方で、哀しいことや悩ましく感じることもありました。不安を抱えながら大きな試練を乗り越えようとしているご家族から、大切なことを学ばせていただいたこともありました。それぞれの家族がそれぞれの物語を抱えていて、子どももまたさまざまにその子の物語を生きているのだということを切実に実感した1年でした。そんな実感から、やまのこを子どもが育つ場所というイメージから、一つひとつの家族の物語を乗せて航行する船のようなイメージを持つように私自身が変化してきました。みなさんの大切な物語を乗せる船として、相応しくなれているだろうかと自問自答する日々です。
最近よく思うのですが、子どもが生まれたら母になり、父になり、家族になるのではないのですね。わたしたちはそうなろうとする意思によって、母になり、父になり、家族になるのだと思います。わたしは母になって、今年で10年(お腹にいたときも含めて)になりました。まだまだ新米、しかし少しずつ私なりに母として歩み、10年一区切り。そう考えると、0歳から6歳の子を育てているやまのこファミリーは、家族としての歩みをはじめたばかり。これからの道のりは長いです。皆さんどうか息を切らせないように。確実に母に、父に、家族になってきているのだと、時々ご自分を褒めてあげてほしいです。
今年は全国的に災害の多い一年でした。気候変動の現実を思うと、この動きが来年は落ち着くと希望的に思うことは難しく感じます。私たちがこの現実をどのように受け止め、行動していくのか、子どもたちに注視されているような気がしてなりません。子どもたちが幸せに生きてほしい、という願いを少しでも可能性のあるものにしていくために、いまできることを具体的に実行していきたいと思います。
2ヶ月をふりかえってみる
11月と12月のやまのこの日々を、学びと催しの観点から5つの出来事をピックアップし、ふりかえります。全体的には、「変容するわたしたち展」で蓄積したドキュメントからの気付きが起点となり、保育者個々に起きた変化が現場に反映され、より柔軟な構えが日々の保育にも展開されたように感じています。
◯PAMA-NOKO Workshop の実施
9月のワークショップに引き続き、11月9日10日にもワークショップを行いました。9月のレイズドベッド(野菜を作る花壇)づくりから、11月にはコンポストコーナーづくりを行いました。ご参加いただいた保護者の皆様、ありがとうございました!
◯ 保育者の交換留学※を実施
こごみ組の保育者のYさんが長野県軽井沢市の「かぜあそび」へ二週間研修へ行ってきました。その間「かぜあそび」からAさんが研修に来てくれました。一日だけの研修ではできない、じっくり関わる中で見えてくる違いや違和感を互いに提示しながら、異なる視点から保育を見つめ直す機会となりました。
※子どもだけでなく、大人や園そのものも学びあい・育ちあいたいという考えから、長野県軽井沢市にある「風越学園」と広島県東広島市の「認定こども園さざなみの森」の3園でスタッフが行き来する取り組みを試験的に始めています。来年度も継続する予定です。
◯ あけび組で森の日の試行
11月22日の八森山遠足で森という環境があってこその子どもたちの伸びやかな時間を目のあたりにして、定期的に継続してみようということになり12月は月に3回の「森の日」を実施しました。12月の全日程終了後、今後やまのこの保育をどのように組み立てていくのか。フィールドを拡張していく可能性について議論を深めていきたいと思います。
◯ 12月14・15日に合宿を行いました
3ヶ月に一度のチーム合宿を行いました。開園から二年4ヶ月が経ち、これまで前提としていたことを改めて問い直す時期にきていると感じています。例えば、クラスがあること、年度途中のクラス移行があること、3-5歳児の午睡のあり方について、などなど。これまであたりまえにやってきた前提の意味を、やまのこが大切にしていることに照らして、また未来の姿を展望しながら、吟味していきたいと考えています。
こうした問題意識から、今月の合宿ではこれまでの前提を揺るがしていくような対話をさまざまなテーマで行いました。取り上げたテーマの中から二つご紹介したいと思います。
①私たちが願う「6歳の子どもの姿」とは
今年はじめて卒園児が旅立っていくやまのこ。0歳からの発達を見通した上で、私たちは6歳児にどのような姿を願っているのかを個々に書き出して共有しました。私たち自身の願いを理解した上で、その願いを分類し俯瞰しながら対話していくことで、6歳児の姿を掘り下げていきました。この対話はこれからも継続していきます。また、そこから発展させて12歳までの子どもの姿まで見通しながら、その基礎をつくる0-6歳の子どもの姿を言語化していきたいと考えています。
今回の合宿で書き出された「6歳児への願い」のごく一部をご紹介します。
・つくり出す力のある人
・自分が好きなことをなんとなく知っている人
・自分の感情を表現できる人
・隣の人に親切にできる人
・自分の身体を思うように動かすことができる人
・遊びをつくることができる人
・料理をつくることが好きな人
・火をおこすために必要な要素がわかっている人
②子どもが「選べないこと」から考える
「子どもの〜したい」を起点にする保育をやまのこでは目指していますが、実際には子どもが選べていないことがたくさんあります。例えば、靴箱に靴を片付けないといけない。服を脱ぎ散らかしたままにできない。寝る前におしっこする。夕方暗くなったら室内に入らなければならない。といったものから、根本的に、家に帰りたいときに帰れない、といったことまで…。子ども視点で「選べないこと」を出し尽くしてみると、本当にいろんなことが選べないんですね。その状況をみんなで眺めてみると「私たちが一緒にいる意味ってなんだろう?」ということが問いとして浮かんできました。そして、したくないことに楽しみを見出していく力も必要なのではないか?どんな状況でも楽しめるってどんなことだろう?など、対話が重なっていきました。そもそも「自由かつ共同は成り立つのか?」という大きな問いにも繋がっていき、非常に実りのある対話へ発展しました。