やまのこ保育園

惑星のようす

"3月から6月のやまのこhome"

2020.07.05
3月から6月のやまのこhome

Text : Tomoko Nagao

3月からの3ヶ月は、人ひとり変わるとコミュニティが大きく変わる、ということを如実に感じる日々でした。ある家にひとりの赤ん坊を迎えることがどれほどその家族にとって大きな変化かを思えば、人ひとり変わることのコミュニティへの影響がいかに大きいかは言わずと知れたことですが、この3ヶ月間のやまのこhomeの構成員の変化と、コロナの影響による暮らし方の変化は、私たちのコミュニティが変容の真っ只中であることを強く印象づけるものでした。

 

コミュニティの変化

大人は、3月にRさん、Mさんを送り、4月に新たにNさんを迎え、6月にもうひとりNさんが育休から復帰されました。子どもは3月にHちゃんを送り、4月に2名を迎え、6月に3名がyamanokoにクラス移行しました。

このようなメンバーそのものの変化に加え、4月からのコロナ対策期間には、家庭保育に協力いただいているご家庭や、2園間の行き来制限から会えなくなったyamanokoの仲間など、同じコミュニティに居ながらもこれまで同様には関わることのできない、新しい関わり方・暮らし方への変化もありました。

 

これまで当たり前だった関わりが難しくなったとき、さあどうしよう、と別の関わり方を考える。本当だったら離任する職員を保護者の皆さんと囲み、座談会のようなものをして送り出せたらと考えていましたが、大勢で集うことが叶わず、きちんとサヨナラができていない、終えられていない感覚があります。でも、そもそもこのコミュニティは終える必要のない、離れても生き続けるコミュニティなのかもしれない。私たちはここで育った子どもたちが、転園・卒園で巣立っても彼らの心に生き続けることを願っているのではないか。そう考えると、終えられてないと感じる気持ちから、終える必要はないのかもしれないという気持ちに近頃変わってきて、新たな関わり方に気づかされる思いです。Rさんは今「自然の中で満ち満ちて、やまのこのみんなの事を、ふとした時に思い出してその気持ちが大きな支えにもなっている」とメッセージをくれました。Mさんは保護者の方たちが寄せ書きをしてくださった色紙を折に触れ読み返していることを、先日お会いした折に教えてくれました。離れた方の心にも、私たちの心にも、やまのこが生き続けていることを感じています。

また、コロナ対策期間の家庭保育の子どもたちと保護者の方々の存在を感じながらの日々は、いかにここが今目の前にいない方々にも支えられて存続しているコミュニティであるかを経験する毎日でした。会う、という当たり前が当たり前でなくなり、直線的でない様々な関わり方が探られました。オンラインの集い、電話ヒアリング、Slackチャンネル等を通して、送迎以外の場で親子一緒にやまのこと交わる場、ご家庭と繋がる機会を持てたことは、今後のコミュニティデザインのヒントをいただいた気がしています。本当に多くのご協力をいただいたことに心からの感謝を申し上げます。

 

やまのこhomeというコミュニティ

2018年より「2園で1つのやまのこ」という意識で過ごしてきました。考えるのは常に2園のやまのこでした。しかし、コロナの非常事態下では、規模(園児数、職員数、部屋数等)や年齢構成等の諸条件、建物の立地や構造上の条件等、この場の具体的な条件に最も適した判断が重要となり、必然的に「やまのこhome」というものを虫眼鏡で拡大するように集中して見ることになったと感じます。

ここがどのようなコミュニティで、どのような構成要素、場所性、ニーズがあるのか。園児のみならず、休校の影響下にあるご兄弟児のこと、在宅勤務等の勤務形態の変化と共にある保護者の方、そういったご家族の変化をサポートするお祖父様お祖母様の存在、育休中で小さな乳児を抱えながら家庭保育に協力くださった方、エッセンシャルワーカーとしてお仕事をされている方など、それぞれのご家庭・ご家族・お仕事の状況など、このコミュニティを構成する方々への感度が一段と高まりました。

また、保育者 Mさんがレポートしていますが、このような関わる人たちへの感度に加え、ガーデン・2つの保育室・キッチンで構成される私たちの保育環境にも、改めて目を向け感度を高く持つことで、やまのこhomeという場所性や意識が、私の中にありありと浮かび上がってくるようになりました。home全体が「家族」や「家」に近づいたとでも言うのでしょうか。園児とか保護者とかカテゴライズする前に、〇〇さん、〇〇ちゃん、〇〇くんである。そのような態度や関わり方に私自身が近づいてきた気がしています。

 

いまわたしたちの取り組み

私たちのベースにあるのはただただ現実で、あらゆる視点で現実と対峙しながら、従来にとらわれないコミュニティの位置づけや役割、価値をつくってしていくプロセスにあると感じます。いま、私たちは保育の環境構成を見直しており、毎週金曜・土曜になるとその週の課題に対する改善や翌週の状況を見越しての環境のリ・デザインとアップデートが行われています。

先日、生後6ヶ月の子を迎えるために環境構成や職員体制を変え、コミュニティ全体で準備をしたときには、冒頭の「人ひとり変わるとコミュニティが大きく変わる」ということを深く感じました。これまで私たちは「入園するのはふき組」とコミュニティの一部の出来事として捉えてしまっていなかったか。新しい仲間を迎える喜びと好奇心がhome全体に満ちた光景は、全てのことが関係し、網の目のように交わりながら全体的にこの場が形成されていることをあらわしていました。まさにひとつの大きな家のように、なんども変形を繰り返しながら育ってゆくこのコミュニティを、これからも子どもたち・保護者の方々・チームの仲間たちと共に耕していきたいと思います。

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