2020.10.01
収穫祭
Text : Saeko Imai
みなさんが「豊かな気持ち」を感じるのはどんな時ですか?家族といるとき、暑い夏の日に冷たい海に足を入れた時、夕日を見る時、など 人によってそれぞれだとおもいます。
私にとって豊かな気持ちは「自分の周りの全てに感謝する」ことによって生まれます。それはいつも照らしてくれる太陽だったり、子どもたちの笑顔、いつもサポートをいただいている保護者の方々、時間を共にしている同僚、お腹を満たしてくれる野菜や果実、それを創り出す土、全てに感謝することによって私が生かされていることを確認して満ち足りてくる感覚が「豊かさ」です。
今年の春先に「小さな地球」に植えた野菜や果実の数々は立派に育ってくれました
かぼちゃ、きゅうり、なす、モロヘイヤ、オクラ、さつまいも、にんにく、トマト、バジル、紫蘇、ローズゼラニウム、ローズマリー、ペッパーミント、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、レモンバーム、コモンマロー、ラベンダー、ジューンベリー、イチジク、メロン
ひとつの作物ができるまでに土やそこに住む微生物など様々なものが必要なように、育っていった植物と子どもたちにもそれぞれストーリーがあります。カラスに食べられることを阻止するためにカカシを必死に作ったり、まだまだ小さいきゅうりを誰が食べるかを巡って喧嘩をしたり、成長を見守っていたメロンがナメクジとカラスに食べられて悔しい思いをしたり、「小さな園庭」は人間同士はもちろん、人間ではないものと共存する場所です。ここで起こる出来事や育ったものは私にとって「豊かさ」の象徴です。ここでの「豊かさ」を保護者のみなさまと分かち合いたいと思い「収穫祭」を開きました。
その時にできていたもので考えた今年のメニューは
・かぼちゃのクッキー
・イチジクとさつまいものパウンドケーキ
・やまのこブレンドハーブティー(ブラックミント・スペアミント・カモミール・レモンバーム)
かぼちゃはMちゃんが苗を植えてくれたことから「Mちゃんかぼちゃ」と呼ばれている「神田小菊」を育てました。初めてかぼちゃを育ててみることから、収穫時期の勘が外れ、大切に育てたかぼちゃがまだ熟れていなくてショックを受けたこともありました。
美味しく熟れた「Mちゃんかぼちゃ」を使い、こごみ組さんがかぼちゃクッキーを作ってくれました。「かぼちゃのクッキ〜かぼちゃのクッキ〜」と歌いながら、優しいオレンジの色の生地をみんなでこね、オーブンに入れた後もじーっとオーブンの中を見つめていました。出来上がったのは一つ一つ形が違う楽しいクッキーでした。
2年ほど前に移植したイチジクの木がぷっくりした実をつけました。まだ熟れていない実は枝から折られた時に白いミルクのような液体を出します。これはイチジクが自分を守る防衛物質です。食べごろなイチジクは全体的にほのかな赤い色になります。一口食べたらとっても甘く、幸せな気持ちになります。子どもたちも独り占めしたいのをグッと我慢して、収穫して細かく刻みました。
そして、6月に植えたさつまいもを掘り起こしました。大きなものを期待して掘っていたのですが、出てきたものがとても小さかったため「泥まみれのネズミさんみたいだね。お風呂に入れてあげよう」とUくんとEちゃんが一つ一つ洗ってくれました。このさつまいもを使い、イチジクと共にパウンドケーキを作ることにしました。
それぞれ出来上がってくるとやまのこはとてもいい香りに包まれました。「嬉しくなっちゃうねえ」とYくんがニコニコと言いました。年長さんに庭先でできているハーブをたくさんとってきてもらって、たっぷりのお湯を沸かしハーブティーを作りました。さあ、あとは外で準備したテーブルにテーブルクロスをかけてお花を花瓶に入れてお母さんとお父さんを待つだけ!
その日は美しい秋晴れの中、次々と現れるゲストに子どもたちはケーキとクッキーを配り、YくんKちゃんのお母さんのEさんにピアノの演奏をしていただいて、とても素晴らしい雰囲気の中、みんなで乾杯をしました。コロナ禍で集うこと自体が困難になった今、このように集まって同じコミュニティの中で暮らしている人々の存在を感じられること、「豊かさ」を形成していただいている人たち、生き物たちに囲まれることに私は感無量でした。
これから寒い季節がやってきますね。鮮やかな秋からモノトーンな冬へ、気温が低くなってもみなさまの心の豊かを忘れずにお過ごしください。