2021.09.01
子どもに流れる時間
Text : Neina Asano
月毎に各クラスでたてる月案。その月案の中で問いを立てるのですが、12月のふき組では”身体の発達を追ってみよう。どう這ってどう歩く?”でした。現在、8ヶ月のLちゃん、10ヶ月のCちゃん、1歳7ヶ月のYくんが在籍するふき組。彼らの身体の変化はめまぐるしく、ふき組担当のスタッフで月案をたてた11月25日と、運営会議でスタッフ全員に月案発表をした12月10日の約2週間で、大きく変化していました。ハイハイで移動する距離が1mほどだったLちゃんやCちゃんは、移動する距離が3倍にも4倍にもなり、11月下旬にはもう少しで歩き出しそう、、!という姿だったYくんはどこにも誰にも掴まらず、10歩ほど歩くように。大人からするとあっという間の2週間ですが、子どもにとっての2週間とはどのくらいの長さなのでしょう。
子どもと大人の体感時間の差があるのかどうか調べてみたところ、心理学の法則でジャネーの法則というものがあることを知りました。ジャネーの法則とは “時間の心理的長さは年齢に反比例する” というもののようです。例えば、50歳の人の1年の体感時間はその人の人生の1/50の長さだが、5歳の人の1年の体感時間はその人の人生の1/5の長さである、ということ。それをふき組の子どもたちと自分に置き換えて考えてみると、1歳の人の1日は、25歳である私の25日分ということに。あっという間の1日ですが、大人からするととてつもなく密度の濃い時間を過ごしていることになります。
体感時間が長いから1、2日でできることが増えるということではないけれど、子どもたちは大人よりはるかにたくさんのものを吸収して、感じて、考えているのではないでしょうか。そう考えると、子どもたちに向き合う一瞬一瞬が大切である気がしてきます。
すべての瞬間を幸せに、過ごすことは難しいかもしれません。でも、流れていく一瞬が子どもたちにとって幸福な瞬間になるよう努力をすることはできます。思いっきり笑ったり泣いたり、大好きな人たちに抱きしめてもらったりすることが、乳幼児にとっての幸せなのではないかと考えるからです。そして、幸福な瞬間を積み重ねていくことこそが、子どもたちの「幸せ」につながっているのではないかと思います。
保育に正解がないように、「幸せ」にも正解はないように感じています。そうであるが故に、私たちは ”今を幸福に生きる” ということを保育目標の一つとして掲げ、日々変化する子どもたちと共に生活する中で生まれてくる問いと向き合い続けているのだなと感じています。