やまのこ保育園

惑星のようす

"あけびキャンプ2020を振り返る"

2020.10.01
あけびキャンプ2020を振り返る

Text : Takuto Kashiwagi

本年度も、年長児と共に「あけびキャンプ」を行いました。この二日間に向けて、私たちが考えたこと、子どもたちと歩んだ道のりを振り返りたいと思います。

「あけびキャンプ」は、夏から卒園までの約半年間で、年長児が急激な変化を遂げるという実感に伴って、昨年に引き続き実施しました。昨年は、やまのこの日常の中で、水と生命の取り扱い方を考える機会が多かったことから、海と川で時間を過ごし、食べ物を自分たちで集めるという経験を計画しました。実際、子どもたちは、生命との付き合い方における言語が増えたと実感しています。

今年度は、テーマを決めることに苦労しました。昨年度と同じような考え方では、今年度の年長児を捉え切ることができないという感覚があったのです。スタッフ同士で、対話を重ねる中で、今年度の年長児は音や色に対する感覚が鋭いこと、また、身体を使った挑戦も多いことが浮かび上がってきました。
そこで、「五感を刺激する豊かな自然の中で、身体を使った挑戦をする」ということを骨子とした展開を考えました。昨年度は「子どもたちが何をしているか」に着目してテーマを決めたのに対し、今年度は「子どもたちがどのような能力を持っているか」に着目してテーマを決めたということもできると思います。
ところが、いざフィールド探しの段階となると、様々な考慮事項が浮かび上がりました。開催が夏であることによる、ヘビ・ハチ・アブ・ヒル・ダニ・カの問題、シャワー等水へのアクセスの問題、調理場所の問題、COVID-19感染を避けるために不特定多数と接しない環境であること、等の考慮が必要になりました。何度も現場を確認し、検討を重ねた結果、本年度は温海にある楯山荘近くで山道を散策したのち、やまのこに戻ってテントを張って一晩を過ごすこととしました。

 

当日、大荷物を背負って登園した子どもたちは、いつもと特段変わらない様子にも見えました。しかし、バスに乗ったら、興奮が隠しきれない様子です。いくつものトンネルを越えて、楯山荘にたどり着きました。山を登り、川で遊び、帰りは電車で鶴岡駅まで帰ります。Suiden Terraceの貸し切りお風呂に浸かった後は、みんなでテント・夕食を準備して夜は焚き火を囲みました。眠りから覚めると、私たちは散歩に出ました。
そこで出会ったものと、一日目に出会った素材を使って、迎えが来るまでの時間を過ごしました。出会った植物を白い布の上で叩くとどのような色になるのか、もともとの花の色と布上の色はおんなじか、どんな形になって色がうつるのか。出会った石を砕いてみると、中から何が出てくるのか、どこまで小さく砕けるのか、どんな色になるのか。出会ったコケを虫メガネで見るとどんな世界に出会えるのか、写真で切り取るならどこを切り取りたいか、自分ってどんな世界に惹かれるのか。

 

自分が惹かれるものを、惹かれるように並べて、創り出したそれぞれの箱を見ていると、それぞれの子どもが見ている世界を、私たち保育者も感じとることができるようで、嬉しかったです。身体を存分に使った一日目、五感と頭を存分に使った二日目。

 

私自身は、「ただ幸せな時間を過ごすこと」の力強さを、最も深く感じました。細部を念入りに準備しておきながら、終わってしまえば漠然とした感想を抱いているなんて可笑しいですね。ただ、お風呂から帰ってきて、夕食の準備をするまでのほんの少しの時間に、ふっと体の力が抜けて、だんだんと空が茜色に染まっていく景色が美しかったことを、忘れることができません。仲間と共に困難に挑戦し、ちょっとしたことでふざけたり、大笑いしたり、ケンカして傷ついたり、ケンカした相手とまた楽しい時間を過ごすことができて嬉しかったり。なんでもないふとした間に、「ただ幸せな時間を過ごした」という満足感が、子どもたちの身体から染み出していたように感じます。

私たち保育者は、子どもたちがこの二日間で身体を思いっきり使って、一つでもお気に入りの物を見つけられれば、それで十分だと思っていました。しかし、実際には私たちの想像を超えて、年長の人たちは自分自身の身体を確かめ、自分自身の感性と向かい合い、表現することになりました。この二日間で撒かれた種、育った芽が、彼ら彼女らの今後の生活の中でどのように育っていくのか、私たちはどのような環境を準備できるのか、興味深く見守っていきたいと思います。

8月22日

8月23日

 

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