2020.07.03
from Garden:木とカラスとジューンベリー
Text : Saeko Imai
4月に入り、感覚的に冬が終わりました。今年は暖冬で大雪が記録的に少なくフキノトウも例年以上に早く出てきて、なんだか物寂しかったように感じます。
それでも季節の変わり目はやってきて、「春」が訪れます。
ぼんやりしたグレーの空から鮮やかな青空が出て来て、去年の枯葉は土地の肥やしとなり、美しい新緑が生まれ、季節の野花がリレーするかのように可憐に咲き始めます。
日に日に変わるランドスケープに人間の心も体も変化するのをひしひしと感じるのではないでしょうか。
私は一年中太陽が上がるとともに目を覚ましてしまうので、微妙な起きる時間の変化など、朝の光景の日々の変化を感じます。そして、何よりも気温が上がることによって子どもたちが外へ出向くことがとっても軽くなりました。まるで太陽に向かう植物のように。そして彼らの肌が日に日に黒くなることに、なんだか深い喜びを感じます。太陽の下でたくさん遊んでいる証拠ですね。
さて、この2ヶ月半の間にやまのこの「小さな地球」でも様々な変化が起こりました。
まず5月の頭に9本の木がやって来ました。
ざくろ、けやき、梅(2本)、ジューンベリー、イチョウ、庄内柿、桑の木、グミの木。
深い深い穴を掘って、遠くからきた木を向かい入れて、どうかやまのこをお家だと感じてくれますようにとお祈りしながらたくさんのお水をあげました。木はご存知の通り歩いたり話したりしませんが確実に生きていますね。光合成をして大きくなり、実をつけて他の生物の食になるものもあれば住みかになるものもある。私たち人間だけじゃなくて生命体にとって、とっても大切な存在です。何よりもすごいのが、木の「今」は来年の「今」とは形を変えること!
私たち人間と似てますね。来年の「今」は木や私たちはどのような景色を見ているのでしょうか。ぜひニューカマーの木々と触れ合ってみてください。
やまのこではもうすでに木にまつわるドラマが始まっています。6月に入って実をつけ始めたジューンベリー(6月に実をつけるから命名された)。真っ赤な美味しい実を食べたいのはもちろん子どもたち。お家でジューンベリーを育てている子達は「おいしんだよ~!」とワクワクしてます。そしてジューンベリーを狙っているのは子どもたちだけではなく、サイエンスパークに住む漆黒のカラスたち。
私は、いずれはカラスたちとこういう関係になるだろうなと思い事前に友情関係(?)を築いたほうがいいと思い、毎朝目が会うたびに「おはよう。美味しい木の実食べないでね。あなたたちにも生きて欲しいけど、あのベリーは私たちが食べたいな。よろしくね」と言っていました。家でも少しカラスの鳴き声を練習しました。
ある朝、1羽のカラスがジューンベリーの木に止まり、実を食べている光景が見られました。
「あー食べてるー」と気づいた Rくん。朝のあけびで瞬時にアクションが求められました。
「俺ちょっと行ってくる!」と裸足で飛び出すJくん。
「やーーーめろおおおおおおおおお!!!!!」とカラスに叫びました。
「か~」っと言って去っていくカラス。その時は一件落着でしたが、まさかこれで懲りたとは思いません。
あんだけ毎日言っていたのに!!と私は少しご立腹。
緊急性を感じたAちゃんは朝の集いで「カラスがジューンベリーを食べてた」という発表をしました。
ちなみに子どもたちは少しでもおいしそうなジューンベリーを見つけると、それをなんとか取ろうとするのでいつもとても必死です。大人は手助けしないのですが、彼らは知恵とチームワークを使って、どうやったら背が高いとこにある実を取れるのかで悪戦苦闘をしています。
そんな中、お昼寝が終わった時に再びカラスが現れました。今度はなんとお友達を連れて3羽もいます!
「あ!カラスが来た!」とAちゃんが気づきます。
「え~!!!!!」と反応する私。勝手に体が動いてしまいました。
「やめて~!!!!!!!!」と叫びに裸足で飛び出すと子どもたちが後ろからついてきます。
「やめて~!!!!!!!!!!!!!」とみんなで叫びます。
「か~」とカラスは飛び去りました。
そこにはなんと見せしめ(?)かのように、カラスが食べたものの残骸が残っていたのです。
そこには10匹以上のメダカ、原形をとどめていない赤い実(いちごかジューンベリー)、その中にはまだ動くメダカ、体半分がなくなったメダカもいました。子どもたちはもうとても興味津々。枝で突きながら「この魚さんどこからきたの?」「まだ生きてる!!!」「この辺の田んぼでメダカいるのかな?」と様々な質問が飛び交います。
ここで始まった緊急会議。
もうカラスに食べられるのはたくさんだ!!
あの残骸を残したのは自慢と見せしめだ!!!
僕たち私たちだってジューンベリー食べたい!と怒り出した子どもたちと私。
どうする?と。
「ネット張ればいいんじゃない?」とRくん。
「んーネット。でも見た目が好きじゃないんだよなー」と私。
「誰かジューンベリーの前でいつも見張りをすればいいんじゃない?」とRくん。
「それじゃ、お昼寝の時どうするの?」とAちゃん。
「んー怖いお化けをかけばいいんじゃない?」とRくん
なるほど~。確かに。
そこで何が必要?と聞いたところ
「とってもとっても大きい紙を何枚も、そしてテープと紐。」とSくん。
みんなそれぞれの「怖いおばけ」と書き始めました。
「目が一つの方がいいよ。」「歯はギザギザだよね」とつぶやきながら
自らの「怖さ」を探求する姿が見れました。
そこから生まれたのはユーモア溢れる素晴らしい作品だらけでした。
その次の日はカカシを作るHくん、家からギラギラテープを持ってくるAちゃん。
それぞれがとてもクリエイティブに関わっている姿が見られました。
その後、子どもたちは見張るようにジューンベリーについていました。
緑の中に光る「丸く赤く光る実」は人間以外の動物にも、とても魅力的なんでしょうね。
気持ちすごくわかります。狩猟人だった私たちの先祖様を彷彿させます。
植物が加わることによって、私たち人間だけではなく様々な虫や動物が大きく動かされています。
ここはまさに「小さな地球」。
これからも呼吸し続けるこの場をみんなで大切に守っていけたらな、と思います。
先日に夏至を迎えた私たちは早くも冬に向かっています。
どうぞみなさん心身共健康にお過ごしください。