2021.03.01
Under The Sea Project
3.クリエーターズチームのプロセス
1.はじまり →more
2.ダンサーズチームのプロセス →more
3.クリエーターズチームのプロセス
4.アクターズチームのプロセス →more
5.三つのチームがミーツする! →more
Text:Takuto Kashiwagi & Yuki Baba
3.クリエーターズチームのプロセス
大人の劇を見せた後、「(いまの舞台は)あんまり海っぽくなかったよね。ここを海にしてくれる人を募集したいと思うんだ」で始まったクリエイターズチーム。どのタイミングで、何が起こっていたのかを整理しながら、振り返ってみたいと思います。
「海に何がいる?」
そう問うた時、挙がってきた多くは「魚!」「サメ!」などの生き物でした。子どもたちは迷うことなく、自分が持っている生き物のイメージを描いていきます。しばらくしてから、5-6歳の人中心に、「魚っていう魚はいないんだよ」と声をかけました。そうすることで「自分が描きたいのはどんな魚だろう」「何という魚だろう」という思いが生まれるかもしれないと思ったからです。何人かは、用意しておいた図鑑を見ながら、その形を描き始めました。魚が出てくる絵本を隣に置いて、見比べながら自分の絵を描く人もいました。
「生き物の他に何がある?」
3日ほど経って、多くの生き物が集まってきたタイミングで、生き物以外の環境に目を向ける問いを発しました。すると「岩!波!砂!洞窟!」などが挙がってきました。これまで、絵を描くことが中心だったところから、段ボールを使って立体をつくる姿が見え始めました。実際に海を見てきて、波をつくる人もいました。その中で、魚を描き続ける人もいました。
「海に見えた?」
リハーサルを撮ったビデオを見て、実際に自分たちがつくった舞台がどう見えたか尋ねてみました。多くの人から返ってきた言葉は「見えなかった」でした。「壁が青くないから海に見えない!」「海ってもっと暗い!」などの言葉が、6歳の人から出てきます。けれども、実際にこれをやろう、ということはなかなか出てきません。それぞれが好きなものをつくっていればよかった段階から、全体として海を作り出す段階に入ったところで、みんなに共通した「海」のイメージが無いゆえの難しさが生じてきているのかもしれないと感じました。
「海の映像見てみる?」
本番まで残された時間内には、本物の海をみんなで見ることができないため、海の映像を見ることにしました。青色や黄色のセロファンを用意しておくと、映像を見てわかった光の具合を表現する人たちが現れました。光の揺れを表現するため、そしてクリエイターズチームメンバーに当日の役割を作るためにも、懐中電灯も出しました。
このような流れを振り返っていると、私たちがクリエイターズチームの場を通じて作りたかったことは、
①自分の「やりたい!」に出会えること
②「海ってこうなってるんだ!」に出会えること=自分の外側を観察すること
の2つだったのだと思います。
魚に惹かれる人もいれば、洞窟に惹かれる人も、光に惹かれる人もいます。絵を描くことに惹かれる人もいれば、造形に惹かれる人もいます。そのために、さまざまな素材を準備しておき、それぞれがやりたいと思うことをできる時間的な余白も準備しておくことが必要です。
そうすると、自分の外側にあるものに関心が生まれ、「どうなってるんだろう?」という気持ちが生まれて観察し始めます。自分が持っているイメージと現実の違いに気づいていくことは、自分を知ることにも、現実=世界を知ることにも繋がります。
ダンサーズチームやアクターズチームのように、目で見てわかりやすい表現ではありませんが、自分の「やりたい」をやっていい、という感覚を積み上げられたこと、そして観察に基づいて作るという経験ができたことは、これからの表現の肥やしになるのではないかと思います。
アンダーザシーで出来上がった数々の「生き物」と「乗り物」