2021.03.01
Under The Sea Project
4.アクターズチームのプロセス
1.はじまり →more
2.ダンサーズチームのプロセス →more
3.クリエーターズチームのプロセス →more
4.アクターズチームのプロセス
5.三つのチームがミーツする! →more
Text:Saeko Imai
4.アクターズチームのプロセス
「演じる=自分ではない何かになりきる」という行為は想像力を膨らませて自分の新しい部分を発見するとても良いチャンスです。そして何よりも人前に立って大きな声を出すことは緊張するけど楽しい!と感じることが、演じることの醍醐味だと思います。子どもたちとストーリーを決めて演技の練習をする上で一番大切にしたいのは、この「楽しい!」という感覚でした。そして、自分の中の海へのイメージと自分の役のストーリーとセリフをすり合わせることが大切だと思いました。よって、決めていく時にまず「子どもたちに何になりたい?」と聞いてみることから始めました。しばらくうーん、と考えてみて、はっと思い浮かぶように「お魚!」「カニ!」「海の中のマーメイド!!!!」とそれぞれのイメージが出てきました。自分のなりたいイメージができたところで「じゃあどんな気持ちでどこにいるかな?」と聞いてみたら「海の下でお腹が空いていると思うぼく」とSUちゃんが言いました。よし!これで台本がかける!と思い、他のみんなのイメージを聞き、ぱっとシンプルなストーリーを作り台本にしました。「とりあえずやってみよう!」と台本をみんなに手渡したところ、初めての自分だけの台本を手にしてすごく嬉しそうでした。そして先ほど述べたように最初の4回はメンバーの変動があったので、毎回新しいストーリーでした。
台本を渡されて自分の役が明確にわかった時、子どもたちの中のスイッチがONになったことを感じました。練習の時のエピソードをいくつか紹介したいと思います。ずっとどのチームに入るか悩んでいたSUちゃん。最初の方は不確かな表情でアクターズチームにいたSUちゃんでしたが、「SUちゃんアクターズチームにする?」と聞くと、いつも確かな大きな頷きが返って来ました。台本をとると徐々に表情が変わり、毎回練習を重ね行くたびに彼の表情に自信が満ち溢れてきました。
KOちゃんは昨年のシアタープロジェクトではカーテンの開閉を担当してくれました。踊ることも歌うことも好きなKOちゃん、今年はカーテン担当だけではとてももったいないと感じ、「KOちゃん一緒に劇やろうよ!」と声をかけると「えーー」と抵抗を見せていましたが、毎回ちょこりとアクターズチームに入っていました。セリフを家で練習して「よしっ」と言うかのような誇らしげな表情で毎回リハーサルで台本をしっかりと手に持ち参加していました。
MOちゃんとMちゃんは最初から自分は海でのマーメイドというイメージがしっかりあり、セリフを決める際もそこから外れることは一回もありませんでした。
Hくんは海の中の魔法使いになると決めました。彼にとって劇の練習は「魔法使い」(=人の病気を治すお薬作り、もしくは毒作りをする人)のイメージと現実世界を擦り合わせていくプロセスの探求の時間となっていました。どうやったら脳内のイメージと現実をマッチングさせられるか、それを追求する彼の表情はとても真剣で輝いていました。
Aちゃんは常にはずがしがりながらもトップバッターのお魚を演じてくれました。
このプロジェクトの最初から目をキラキラさせていたAOくんはカニになると決めました。
「僕アクターズチームに入りたい」と終盤で現れた、RくんとAKくん。Rくんは「わかめ」役、AKくんは「海の下の猫」役と既に自分の中で決めていました。AKくんは決まった台本の通りに話すことは最初から選択していなかったように思えます。彼の中の海の下の猫は優しく強くて他の生き物を助けるのが大好きな生き物でした。そして本当に優しいからこそ自分にも優しい像を練っていたように思えます。それはなぜかというと、毎回彼のいうセリフは変化していたにも関わらず、必ず「僕は人を助けるのが大好き」「でも人を助けられない時もある、疲れているからだ」というセリフ言い回しを変えながら入れていたからです。それがアドリブでできるって心底すごいと思いました。
このようにしてイメージと合わせた台本を作り、発声練習を重ねながら、練習を続けていきました。
ある時の台本。この後AKくんとRくんが加わっていった。