2021.03.01
Under The Sea Project
5.三つのチームがミーツする
1.はじまり →more
2.ダンサーズチームのプロセス →more
3.クリエーターズチームのプロセス →more
4.アクターズチームのプロセス →more
5.三つのチームがミーツする!
Text : Saeko Imai
5.三つのチームがミーツする!
三つのチームがそれぞれ探究を深めた2週間。「経過発表」という名のもと各チームが何をしてきたか発表しあいました。その後に、衣装作りとリハーサルをして、いよいよ本番です。そこまでのプロセスを振り返りたいと思います。
衣装
3週目に入り、自分たちの衣装を制作するウィークを設けました。「衣装を作る」とは自分の中の想像力を形にするのにすごく効果的な作業です。そして衣装を着たら、外面はもちろん、内面も変わる気がしませんか?新しい自分と出会う、という意味でもすごく面白いツールだと私は思います。Sちゃん、Eちゃん、Aちゃんは自分好みの布を手にした瞬間「これ!これ!」というかのように自分の中のイメージしていたものを早速ハサミとテープとともに形にしていました。Kちゃんはじっくりゆっくり考えて、まずは自分のイメージを紙にかき出し、素材を揃えて、あーでもないこーでもないと言いながら制作に取り掛かっていました。「カニ」役のSUちゃんは自分にピッタリな色(ピンクがかかった赤)を選び、大人のサポートと共にカニの衣装が出来上がっていきました。それを着たSUちゃんは「本当にカニさんになったみたい!」と自信と喜びに満ち溢れていました。
KAくんはどうしてもサメの衣装を作りたいと言って保育者と一緒にサメの資料を見ながらダンボールでサメを型取り、色を塗り、一週間かけて完成させていました。
リハーサル
本番前日に劇の通しリハーサルを一回しました。その映像を撮って、練習後みんなでビッグスクリーンで見てみました。そこから見えたのは数々の気づき。「全然声聞こえなかったね。」「左に寄りすぎてて自分が見えなかった。」「(セットが)全然海に見えなかった。」自分たちの制作を客観視できるチャンスでした。最後の練習日はそれぞれのフィールドの調整に時間を費やしました。これをすることによってぐっと気持ちを高めることもできました。
ビッグスクリーンで自分たちの姿を見て色々な気づきや表情が生まれる
当日の様子
待ちに待った本番の日。「今日だよね?今日(お父さんかお母さん)来る日だよね?」と子どもたちは朝からソワソワの様子です。SOくんが家から「これ使えると思って。」と大きな貝殻を持ってきました。身の回りのもので自然とお客さんをウェルカムするしつらえがされていきます。午前中に最後のリハーサルをして最終調整をしました。あと少しで本番というところで「あれ?僕今日何をすればいいんだっけ・・?」とSOくんとKIちゃんが言いました。そう、ずっと舞台制作をしていた人たちは自分自身がスポットライトを当日浴びることはありません。当日が本番でドキドキワクワクするアクターズチームとダンサーズチームの盛り上がりを見て、2人からふと出てきた問いでした。「何か舞台で本番したい?」と聞くと、2人とも「うん」とのこと。2人は何をしてくれるのでしょうか。
さあ、待ちに待った本番です。緊張のあまりかその日のお昼寝のおねしょの数が多かったように思えます。お昼寝を終え、それぞれの衣装に着替えて、控室に向かい、自分の番を待ちます。以前からイベントでよく司会を務めるJくんに司会を頼みました。お客さんも揃い、さあ始まる!というところで一つのドラマが起こりました。普段と全く違う空気感に包まれた会場にトップバッターの司会を務めるJくんが緊張のあまり、マイクをもったままお客さんの前に立てなくなったのです。それもそのはず、真っ暗の会場で一人で話すことは大人でも非常に緊張することです。彼は心の中で、果たしてできるかどうかを自分と問うていました。観客の中から「Jくんがんばれ!」と暖かい応援の言葉がありました。彼は最後の最後まで悩みましたが「僕は今は(司会)しない」と勇気ある決断をした後、ショーは始まりました。
最初ステージに立つアクターズチームの子どもたちは、本番直前まで自分のセリフと声量の練習をしていました。一つ面白いエピソードがあります。本番でこれからAKくんのセリフ、というところで客席の後ろからは全く彼の声が聞こえませんでした。しかしよく見に近くに行くと、しっかりと彼は口を動かしています。そして表情もとても生き生きしている。無音で表現する。これは彼の中での表現方法なんだ!と私は捉えました。
さあダンサーズチームの番です。音楽と共に大きな笑顔のダンサーズチーム登場です。歌の半分は自分たちで決めた振り付け、最後の半分はお客さんをステージに誘って一緒に踊るフリースタイル。練習をたくさんしたせいか子どもたちからは余裕すら感じました。楽しそうに踊る子どもたちがかもしだすエネルギーはもう最高!クリエーターズチームの子達が海中ならぬ懐中電灯でダンサーズを照らしてくれていっそう海感が高まります。そしてダンサーズチームの後ろでSOくんとKちゃんは自分たちが作った工作の巨大な貝を開いたり閉じたりしています。素敵な演出!
大きな歓声の中でショーは終わりました。
その後
「え?もうアンダザシー発表しないの?あーあもう一回したかった」と子どもたちは終わった後も少し拍子抜けをした様子でした。まだ子どもたちには発表したい熱がある、そして他のやまのこの子どもたちにあけびを見てもらう良いチャンスだ、と思い、今度はやまのこの子どもたちとスタッフに発表する会を設けました。馴染みのメンバーで、遮光カーテンも開けたままで雰囲気も柔らかかったためか、Jくんは「これなら絶対できる!」と自信に満ち溢れた司会業を勤めてくれました。
自分の中の「好き」を探求する1ヶ月になったという感触を受けます。何より歌って踊る楽しさはアンダーザシー発表後にも子どもたちの中でしっかりと根強く残り、あけびでは突如スピーカーと音楽で始まるダンスパーティーが文化となりつつあります。そして、「お休みの時に海に行きたくなった」と言ってシーグラスをたくさん見つけて持ってきてくれた子が続出し、海への興味や好意が深まったと思います。みんなの中で生き続けるアンダーザシー、どのような形でこれから出てくるのが楽しみです。